訳者プロフィール
10月25日生まれ
22歳で渡英。 雰囲気的なものなのか、「魔女?」と言われ続けるので、意を決して魔女になるべく占星術のセミナーへ。ところが、アストロジーとアストラルを勘違いしてアストラルリーディングを取得。それだけではなく、その講師の方からわたしの前世は西ヨーロッパの魔女であり(キリスト教徒から魔女と呼ばれていた歴史もありますが、本来はハーブの調合師)、黒魔術に傾倒して悪魔と契約していたと告げられる(契約はそこで破棄してもらえました)。
その1週間後、フィンランドの森でトナカイの群れに出会い、ダイヤモンドダストの舞う白の世界に魅了され、雪を求めて現在は猫と金沢に在住。
2017年の春、わたしは花になることを決意しました。
わたしは子供の頃から、無機質なものになりたがる子供でした。
例えば、「石になりたい」とか。
長い年月をかけて、山頂の岩が雨や風に削られ、川を下り、河原や海辺で石や砂へと粉々になって、また長い年月をかけて山へと移り変わってゆくのはどんな気分だろう?と、そこから見える景色を想像するのが好きでした。同じ理由で「木や水になりたい」とか「空気になりたい」、「音になりたい」など、わたしが夢見たものはいつも人間以外の何かでした。
花になりたい理由のひとつは、マドンナ(あの"Like a Virgin"のマドンナです)が、「マドンナという名前に生まれたからにはマドンナとして生きるのがいいのよ」と言っていたのに感銘を受けて。
私の名前はユリです。ユリという名前に生まれたからには、ユリとして生きるのがいいのかもしれない、と。
ふたつめは、ユリの花は聖母マリアの象徴でもあり、マリア様の言葉で「私はRemedium(薬)ではありません。天と地のMedium(中間)にいます」というラテン語を読んだことがあります。
この台詞はこれまでに色んな場面で私を助けました。Mediumは『中間』という意味以外に『媒体』という意味もありますが、海外で暮らしたことのある私がいつも心に留めている言葉です。
(ふと気がつきましたが、マドンナも聖母という意味ですね。私はふたりの聖母に導かれたのかもしれません)
MediumでありLilium、これがわたしのコンセプトです。
日本と海外の間にいること。
人と人ではないものの間にいること。
媒体として生きること。
ニュートラルでいること。
その活動のひとつが翻訳です。
村上春樹さんの「翻訳が趣味」の言葉に触発されて、それって趣味になり得るの?と疑問に思い、翻訳を始めました。
言葉のかけらを集めて新しい文章を紡ぎ出す。ひとつひとつの言葉の意味を深く、深く受け取りながら。
さて、これが『ボタニカル・インスピレーション』を薬草(ではなく、訳そう)と思った経緯です。この美しいボタニカルの世界が時代を越えて私たちに語りかけるインスピレーションを楽しんでもらえることを願っています。
*1:Carnation, Lily, Lily, Rose/John Singer Sargent 1985
*2:The Annunciation/Dante Gabriel Rossetti 1850